「次代の京都を創る具体的なアクションとは何か?」をテーマに、未来を創造する京都らしいエッセンスを集めたメディアです。
第1回は、北川一成さん(グラフ株式会社 代表取締役)にお話しを伺いしました。
北川 一成 氏 グラフ株式会社 代表取締役
筑波大学卒業。世界のトップデザイナーによって構成されている最もプレステージの高いグラフィックデザイナー団体、国際グラフィック連盟(AGI)会員。ニューヨークのADC賞、ロンドンのD&AD賞など国際的なデザインや広告賞の審査員を務める。人の心に響くコミュニケーションデザインの創造を目指し、デザイン・ブランディング・知財戦略・キャラクター開発・ものづくり等を一貫して行う。経営者とデザイナー双方の視点に立った“経営資産としてのデザイン及び無形資産価値”の提案に特化する。地域の中小企業から国内大手企業または海外の著名高級ブランドまで、多くのクライアントのブランディング、コンセプト立案、コンサルティング等を手掛ける。ADC賞、TDC賞、JAGDA賞、等受賞多数。カンブリア宮殿(テレビ東京)、芸術劇場(NHK)、ルソンの壺(NHK)、等テレビ出演多数。
「新しい本物」が生まれる期待
一度見たら記憶に残る『変なホテル』のネーミングをはじめとするブランディングや京都からスタートしたアートプロジェクトKAMIZUなど幅広いクライアントの期待を超える北川さん。
――GRAPHが取り組むのは、ビジネスの役に⽴つ「経営資源となるブランド」の創出と育成です。(引用:グラフ株式会社HP ABOUT)
そんなブランド作りのプロは
「京都は古くからのものが残っていることが1つの資源になっていますよね。受け継がれた資源から、新しい本物がもっと生まれて欲しいと思っています」
と京都への期待から教えてくれた。
『新しい』と『本物』。まだこの世にない、世界に通用するものが京都から生まれるために必要なアクションとは何かーー
習わぬ経は読めぬ
「人間の想像力は、記憶や体験に依存するんですね。だから新しいものを生み出すためには経験が必要。例えばそれは、最先端の科学であり、歴史であり、国際的な世間を知るということなんです」
語られた経験とは、観て・聴いて・読んで学ぶ、体験からなる『理解をした』という状態。インプットされた豊富な理解から想像 / 創造が生まれるという。
科学(未来)を理解する
「私は(元京都大学総長の)山極先生のゴリラの本が大好きで、山極先生やIPS細胞研究所の山中先生といった素晴らしい知識者が京都にいらっしゃいますよね。そうした方々の最先端の知見が、京都の持っている『らしさ』につながると思うんです」
最先端の科学知識が、未来を創る発明に。どの時代も科学の発展とともに変化を起こしてきた。大学が多い京都は、まさに最先端の科学があるまち。新しい発見を活かしやすい距離にあることも京都らしさの1つなのかもしれない。
「一見役に立たないように見えるものも、本当に役に立たないものはないと思っていて。それを知っているかどうかが大事なんです。そういう意味でも最先端と可能性が京都にはありますよね」
歴史(過去)と世間(国際)を理解する
「日本史と世界史と分けて勉強しますが、私は歴史学にしたらいいと思っているんです。世界は繋がっていて、グローバルな影響を受けてますからね。世界から見た京都がどうであったか。その歴史を学ぶことで理解が深まりますよね」
京都の歴史だけでなく、外の世界のとの繋がりや影響を辿ることで、見えなかった価値が見えてくる。また、北川さんは、都ができた平安京以前の歴史も掘り下げる意味があるという。
「グローバルな影響を受けるのと同時に今は過去の影響を受けていますから、平安京以前の文化や歴史を知ることも大事です。京都を内と外から理解し、グローバルやインテリジェンスに通用するものが本物ですね」
北川さんが海外の著名なブランドの要望に応えられるのは、人類史まで遡りその本質を捉え、世界へと視野を広げているから。
本物の秘密はその理解の深さと視野の広さにあった。
北川さんからのギフト
『次代の京都を創るアクションとは』。それは、京都そのものの文化や歴史を深堀りし、世界から見た京都を理解すること。
それを経て見えるアクションが起こることを期待された北川さん。最後に、そのアクションを後押しする言葉をいただいた。
「最近失敗してますか? 失敗は成功のもと。人間はどんな時に記憶するかというと、えらい目にあった時に覚えているんですよ。楽しいことって忘れてるでしょ? 辛いことを経験することで人は学ぶから、恥をかくとか失敗するとか、死なない程度に頑張ってくださいといつも言ってるんです」
リスクヘッジという言葉が大嫌いで、転ばぬ先の杖も大嫌い、と笑顔で語る北川さん。
何もしない方がリスク、挑戦して転んだ先の未来の方がおもろい と世界から見た京都にエールをいただいたように感じた。
世界に通用する『新しい本物』が増える未来は、京都の意識次第で決して遠くないのかもしれない。