京都創造者大賞 2016
各賞受賞者
京都創造者大賞
伏見酒造組合
「京都発・日本酒の国内外への普及活動を通じた 日本文化の発信」
・1875年 | 現組合の起源となる 「伏見酒造家集会所」設置 |
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・1953年 | 現組合設立 |
・2009年 | COCON烏丸で「京都伏見SAKEZO'S BAR」開始 |
・2012年 | 「錦のうまいもんと京の日本酒祭り」開始 |
・2013年 | 「日本酒条例サミットin京都」開始 |
・2014年 | 「伏見の清酒まつりin大手筋商店街」開始 |
・2014年 | 「京都日本酒電車」開始 |
・2015年 | 「全国一斉 日本酒で乾杯!」開始 (日本酒造組合中央会主催) |
・2016年 | 第10回「伏見の清酒 新酒蔵出し日本酒まつり」 |
【事業内容】
今年10回目を迎えた「伏見の清酒 新酒蔵出し 日本酒まつり」や「京都伏見SAKEZO'S BAR」の開催などを通じ、日本酒の魅力を発信する様々な取り組みを推進。京都発で近年全国に広がった「日本酒による乾杯条例」制定の機運を盛り上げた。また、近年の世界的な「JAPANESE SAKE」ブームを受け、海外向けのPRにも積極的に取り組む。現理事長の増田德兵衞氏は伏見で最も古い蔵元の一つである清酒「月の桂」第14代当主であり、これまでに日本酒造組合中央会理事・海外戦略委員長、日本酒条例サミットの実行委員長も務め、さらに2015年には京都国際観光大使にも就任している。
【審査講評】
趣きのある酒器に注がれた日本酒を手に乾杯の時を迎えると、一瞬の静寂とともに、華やかな香りが辺りを包む。それは先人たちが長く大切にしてきた瞬間である。当組合は、我が国屈指の酒どころ伏見が蔵元一体となって酒とそれを愛でる文化を磨き続けた誇りを背景に、多彩な働きかけを工夫され、洋酒に傾きがちであった日本全国の人々が自国の酒を見直す機運を盛り上げることに成功された。和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本酒も今や「JAPANESE SAKE」として世界各地へ展開すると同時に、一層の洗練をとげている。今後も多様な場を通じて京都から国内外へ日本の酒文化を広めていかれることを期待したい。
京都創造者賞
もてなし・環境部門
佐野 藤右衛門
「桜守として桜の保存活動を継承」
・1928年 | 京都市生まれ |
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・1959年 | 故イサム・ノグチに協力しパリ・ユネスコ本部の日本庭園を造成 |
・2005年 | 京都迎賓館の庭園を棟梁として造成 |
【事業内容】
庭師の名跡。代々、仁和寺御室御所の造園を担ってきた京都・嵯峨野にある造園業「植藤」の当主が襲名する。当代の第16代は、日本の造園家、作庭家。祖父である第14代藤右衛門が始めた日本全国の桜の保存活動を継承し現在約200種を保存、京都円山公園の桜をはじめ「桜守」としても知られる。桂離宮、修学院離宮やパリ・ユネスコ本部の日本庭園を整備。東日本大震災を受け、京都で育てた桜の苗木を福島で2年間育て、京都に里帰りさせて、再び育てる取り組みにも参画している。現在、東日本大震災の津波到達地点に「浪分桜」を植え続けている。
【審査講評】
その開花の報せに、誰もが新たなシーズンの始まりを感じる桜。やがて散るまでの日ごとの花の姿に、人々はそれぞれの思いを重ねる。桜は古来日本では人の心の琴線に触れる特別な存在であり続けている。桜守として三代にわたり、円山公園のしだれ桜をはじめ、全国の名桜を、旺盛な研究心を失うことなく守り続けてこられた事績は、20世紀の京都の歴史を鏡のように写すものでもある。同氏は今も春夏秋冬、桜と向き合い、世界でも特に生物の多様性に恵まれた日本にふさわしい多品種の桜によって都の華やぎをさらに豊かにと日々工夫を重ねておられる。これからもさまざまな桜木との対話を続けられ、花とともに歩む京都の文化を守り育てていかれるよう願ってやまない。
アート・文化部門
アートコンプレックスグループ
「ロングラン公演を続けるノンバーバル・パフォーマンス『ギア-GEAR-』」
・2010年 | 第1回トライアウト 文化庁 地域文化芸術振興プラン推進事業(大阪) |
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・2010年 | 第2回トライアウト 近畿経済産業局 Cool Experience in JAPAN事業(大阪) |
・2010年 | 第3回トライアウト(長崎) |
・2011年 | 第4回トライアウト 文化庁 平成22年度優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業(大阪) |
・2011年 | 第5回トライアウト(京都・ART COMPLEX 1928) |
・2012年 | ロングラン公演開始 |
・2012年 | 日中国交正常化40周年記念事業「元気な日本」展示会参加 |
・2015年 | ロシア企業とのライセンス契約成立、モスクワにて6ヵ月間のロングランを開催 |
【事業内容】
三条御幸町にある旧毎日新聞社京都支局ビル内の劇場・アートコンプレックス1928において、2012年4月より舞台『ギア』をロングラン上演。マイムやブレイクダンス、ジャグリングなど世界レベルで活躍するパフォーマーが、言葉を使わず(=ノンバーバル)に表現するため、子どもから大人、訪日外国人も楽しめる作品となっている。プロジェクションマッピングや光のドレスなど新しい演出も魅力の一つで、わずか100席の劇場でありながら現在10万人動員を突破しており、今秋には1500公演を達成予定である。京都の新しい観光コンテンツとして定着し、今後も日本発の舞台芸術作品を世界へと発信することが期待されている。
【審査講評】
荒廃した未来社会でロボットと化した若者たちは人間に近づけるか――セリフはない。観客は五感を研ぎ澄まし、世界レベルのマイムやダンス、マジックやジャグリング、音楽、映像が交錯するショーに引き込まれ、多彩な異物の絡み合いが生み出すエネルギーの高まりを体感する。年齢、性別、国籍を隔てる壁が取り除かれたその空間には、日本のアニミズム風の万物共存調和の気配が漂う――90年を超える洛中の建物の中で続くこのショーは、まさに今の国際都市京都ならではのものであろう。公演がまもなく1500回を迎えることは、非凡な経営力の成果でもあり、今後も様々な世界との〝歯車合わせ〟を進めながら、文化創造を牽引されることを期待したい。
企業部門
株式会社紫野和久傳 京丹後久美浜工房
「「森の中の食品工房」として地域と一体となった新たな企業活動を推進」
・2007年 | 植樹祭開催(地元住民等約1,600名参加) |
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・2012年 | 和久傳の森 植樹5周年祭開催(約1,000名参加) |
・2014年 | 新工房植樹祭開催(約1,000名参加) |
・2016年 | 和久傳の森 植樹10周年記念鼓童特別公演(約2,000名来場) |
【事業内容】
創業の地である地元丹後で苗木を利用して植栽する緑化計画に基づき、一万坪近くある敷地を活かし「和久傳の森」づくりを実施。多くの地元住民の参加のもと植樹祭等も定期的に開催しており、森は一般開放され府市民の憩いの場となっている。また、工房では雨水を植物の散水等に利用したり、冬季は電力を使わず雪で保冷するなど省エネルギー化にも努めているほか、多くの若者を雇用しており、地域ぐるみでの森づくりと工房づくりを通じて、地域資源を生かした新しい企業活動を展開している。
【審査講評】
創業の地へ恩返しを―そのような思いから京丹後に開かれた工房は、土地の多彩な樹種を混在させて活かすという森づくりに象徴されるように、地域の歴史や風土との絆を年々強めてこられた。植樹祭や森の一般開放などを通じてすでに多くの訪問者の笑顔を引き出されたのみならず、美術館開設の準備も進めておられる。地産という恵みを活かし手作りすることを大切に思う若い従業員を育てつつ、地域社会と共に歩むことで、縁ある人々すべてを輝かせるという経営姿勢は、新たな企業市民の一つのモデルといえる。10年を迎えた工房と森のさらなる発展により、美しい久美浜湾の小天橋のように今後も企業と社会との架け橋になられることを願いたい。
未来への飛翔部門
あじき路地
「路地の古家を活用したものづくり支援と歴史的建築物・景観の維持」
・2004年 | 当初7軒の長屋を改修し7名の若手作家入居開始 |
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・2005年 | 国土交通省が町家・長屋路地再生の好例としての調査 |
・2012年 | ドイツのライプツィヒの空き家・空き工場対策で協力、活用提案を行う |
・2014年 | 京都市の歩くまち京都CMに起用 |
・2016年 | 11軒にまで増えた長屋で若手作家が精力的に活動中 |
【事業内容】
袋小路の路地にある築100年以上の町家の長屋の空き家を、ものづくりに携わる若手作家に安価で貸出し、全国的にも珍しい「職住一体」の工房兼住居として活用してもらうことで、古家の活用価値を高め、京都の歴史的景観を維持する取り組みであり、歴史的建築物を維持しながらまちの活性化に繋げた先駆的な好例として国内外から注目される。週末には住民が制作した創造性溢れる作品等を求め、観光客や地元民で賑わう。各地で深刻化する空き家問題への対策を提示し、その活用法について個人や行政等から相談も受ける。
【審査講評】
ながらく京都の町衆の生活の場であった路地。限られた空間で豊かに暮らす智恵がにじむ独特の景観を残す路地は、いわゆる〝都市開発〟に押され、無機質なビル群に急速にとってかわられようとしている。しかし、祇園・宮川町近くのこの路地では、築百年を超す長屋にひびく一つひとつの音に、新たな創造の息吹がこもる。ものづくりを志す全国の若者たちからの入居希望は今も絶えない。この現象は、不易流行の町京都にあって、この路地にこもる歴史と文化、その重みや力を感じる若い精神、そしてその人たちの志を応援したいとの大家さんの願いとがあやを織りなしてこそ続くのであろう。この路地の小さな工房から、世界へ羽ばたく創造者が次々と生まれることを期待したい。
応募状況
募集期間:平成28年3月15日~4月28日
248件(自薦30件/他薦55件)
もてなし・環境部門 | 59件 | (自薦4件、他薦55件) |
アート・文化部門 | 71件 | (自薦14件、他薦57件) |
企業部門 | 67件 | (自薦9件、他薦58件) |
未来への飛翔部門 | 51件 | (自薦3件、他薦48件) |
選考状況
・選考委員会 平成28年6月24日
・顕彰委員会 平成28年7月1日
授賞式
日時 | 平成28年9月16日(金)午後2時~同3時50分(午後1時30分開場) |
場所 | ロームシアター京都「サウスホール」 京都市左京区岡崎最勝寺町13 |
記念講演
「映画と私、そして京都」 |
副賞
京都創造者大賞 トロフィー、活動助成金100万円
京都創造者賞 トロフィー、活動助成金50万円
「創造の息吹」 | |
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創造の息吹は、伝統の上に芽生える。
京都の地に根付いた伝統の上に、新しく生み出される創造の心を継承・発展してゆく情景を、大地に根付いた手を伝統に見立て、生み出されるものを子供に象徴化した。 江里 敏明(えり・としあき) 1947年京都市生まれ。 日展を主な発表の場とし、現在 日展評議員・日本彫刻会運営委員。 主な作品に田辺朔郎像、北垣国道像、毛利輝元像、中岡慎太郎像、 京都国体メダルなどがある。 |
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※賞状には京都の無形文化財にも指定されている黒谷和紙を使用 |