京都創造者大賞 2018
各賞受賞者
京都創造者大賞
井上 八千代(京舞井上流 五世家元)
「創始200年を超える京舞井上流の伝統継承と新たな取り組みへの挑戦」
井上 八千代 |
・1956年 | 観世流能楽師の九世 片山九郎右衛門 (幽雪)の長女として京都に生まれる。 |
---|---|
・1959年 | 3歳で井上流に入門、井上愛子(四世八 千代)の薫陶を受ける。 |
・1975年 | 八坂女紅場学園の教師となり、以後「都 をどり」「温習会」等の指導にあたる。 |
・2000年 | 五世 井上八千代を襲名 |
・2013年 | 日本芸術院会員、紫綬褒章受章 |
・2015年 | 人間国宝認定 |
明治5年に創設された「都をどり」 |
クラシック楽曲「ボレロ」による京舞披露(泉涌寺音舞台) |
【事業内容】
1956年京都市生まれ。父は能楽シテ方観世流の人間国宝、故片山幽雪氏。京舞井上流家元の四世八千代の孫にあたる。3歳で井上流に入門、四世を師匠に稽古を始め、1975年には芸舞妓に舞、邦楽、茶道などを教える「八坂女紅場学園」の教師に。京都の花街の一つ、祇園甲部の春公演「都をどり」の指導を続け、後進の育成、伝統芸能の継承に寄与する一方、クラシックのボレロで京舞を披露するなど、革新的な取り組みも展開。芸術選奨文部大臣賞や日本芸術院賞など受賞多数。2013年日本芸術院会員、紫綬褒章受章。2015年には人間国宝に認定される。現在は、京都造形芸術大学教授や公益社団法人日本舞踊協会常任理事も務める。
【審査講評】
江戸後期の創始から200年以上の間、脈々と受け継がれてきた京舞井上流。その舞姿の力強さと美しさを不断の稽古により継承すること、そして後進育成に余念なく取り組むことは、京都の伝統諸芸振興の基軸のひとつをなしている。また、京舞井上流の格を守りつつ、現代の粋を凝らした新たな舞いにも挑戦する姿は、「都をどり」が明治初期に画期的な演出として誕生して以来、様々な趣向を取り入れつつ上演され続けていることにも相通じ、人々の心を惹きつけてやまない。今後も、かけがえのない京都の風雅を極めることに精進され、国内外のより広い範囲の人々に感動や創造へのひらめきがもたらされるよう、ますます活躍されることを期待したい。
京都創造者賞
公益社団法人宇治市観光協会
「日本初の人工ふ化で誕生したウミウと目指す『放ち鵜飼プロジェクト』」
宇治川の鵜飼 |
・2014年 | 産卵、ヒナ誕生、巣立ち、川デビュー。愛称「うみうのウッティー」とそのイメージキャラクターを公表。 |
---|---|
・2017年 | 日本民俗学会誌『日本民俗学』292号にウミウの繁殖飼育技術につき共著論文発表。 |
・2018年 | 放ち鵜飼のためのクラウドファンディング実施。 生き物文化誌学会誌『BIOSTORY』29号に飼育下ウミウの繁殖生態につき共著論文発表。 |
澤木鵜匠とウッティー |
愛称・イメージキャラクター |
【事業内容】
川面に篝火が映え、鵜匠と鵜が一体となって繰り広げられる絵巻物のように鮮やかな宇治の夏の風物詩「鵜飼」。2014年に日本初となる人工ふ化によるウミウ(海鵜)のヒナが誕生して以来、4年連続でふ化に成功し9羽のウミウが成鳥となる。また、国内で途絶えた追い綱(鵜飼の際に鵜匠と鵜を繋ぐ綱)を使用しない「放ち鵜飼」の復活を目指し、「放ち鵜飼プロジェクト」を立ち上げ、人工ふ化から育ったウミウの訓練を続けている。2018年にはクラウドファンディングによる資金調達も開始。ヒナの飼育に尽力し、全国でも数名しかいない女性鵜匠達の活躍が多くのメディアで紹介されるなど、京都・宇治の歴史、文化、観光に新たな輝きをもたらしている。
【審査講評】
平安時代には既に行われていたとされる「宇治川の鵜飼」。その幻想的な風景に、毎年訪れる多くの観光客や市民がいにしえに想いを馳せ、川の恵みを楽しんでいる。そのような「宇治川の鵜飼」に「ウッティー」たちの活躍という新しい魅力が加わった。数々の試行工夫の末、日本で初めて成功したウミウの人工ふ化や「放ち鵜飼プロジェクト」などの創造的かつ地道な取り組みは、観光振興への貢献とともに、新たな歴史の幕開けを感じさせる。現代人の自然への想いや人と鳥との共生を形にする「放ち鵜飼プロジェクト」をぜひ実現し、地域社会と共に京都・宇治の魅力をさらに高め、伝えて行かれることを期待したい。
京都創造者賞
一般社団法人KYOTOGRAPHIE
「文化都市・京都を舞台に京都ならではの特徴ある写真祭を開催
『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』」
KYOTOGRAPHIE 2018 |
・2012年 | KYOTOGRAPHIE実行委員会発足 |
---|---|
・2013年 | 第1回KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭開催 一般社団法人KYOTOGRAPHIE設立 |
・2015年 | フランス・アルル国際写真祭へ作品出展 |
・2016年 | 中国・連州国際写真祭へ作品出展 |
・2018年秋 | TOKYO GRAPHIE開催予定 |
京都新聞印刷工場跡での展示 |
両足院(建仁寺内)での展示 |
【事業内容】
世界屈指の文化芸術都市・京都を舞台に開催される、日本で数少ない国際的な写真祭。2013年からの6回で、計約56万人の来場を記録。2018年は「UP」をテーマに4月半ばから5月半ばの1か月間、国内外の写真家の貴重な作品を、丹波口エリア(京都市中央市場場外)や京都文化博物館別館、両足院(建仁寺内)など、趣のある歴史的建造物や近現代建築の空間、全15カ所で展示。期間中は各所の展覧会を巡るガイドツアーや体験型のワークショップ、親子で楽しめるキッズプログラムなど、様々なイベントを開催し、伝統工芸職人や最先端テクノロジーとのコラボレーションも実現した。世界文化自由都市宣言40周年を迎え、文化庁本格移転を控える京都にふさわしい写真祭への歩みを進めている。
【審査講評】
この写真祭には、言葉の壁を越えて強いメッセージを放つ作品が並ぶ。会期中、京都の街は特別な雰囲気に包まれる。2013年の第1回開催以来、その注目度は着実に増し、多くの観客を京都へといざなってきた。また、観客のみならず、国内外から写真家や関係者が集うことで様々な交流を生み出し、新たな価値の創造に貢献するとともに、建築や伝統工芸の素晴らしさ、文化としての先端技術の発見など、京都の多彩な魅力を世界に提示している。引き続き、国際的な表現者としての写真家の誕生・育成につながる事業として、また伝統と革新を繰り返してきたこの地の文化を思いがけない角度から刺激し続ける仕組みとして、さらなる展開を期待したい。
京都創造者賞
グンゼ株式会社
「多様な事業展開や新たな交流拠点の創設等により
創業の地・綾部の地域振興に貢献」
綾部本社 |
・1896年 | 郡是製絲株式會社設立 |
---|---|
・1909年 | 正量取引を開始 |
・1952年 | 「1シーズン1プライス」の建値制をメリヤス肌着業界で初導入。 ナイロン製のフルファッション靴下を日本初生産 |
・1986年 | 体内で分解吸収される手術用吸収性縫合糸の日本初となる販売開始 |
・2014年 | あやべグンゼスクエア開設 |
・2018年 | 北部産業創造センター開設支援 |
北部産業創造センター |
あやべグンゼスクエア |
【事業内容】
2018年に没後100年を迎えたグンゼ創業者 波多野鶴吉氏は、「粗の魁」(品質粗悪)と酷評された京都の繭・生糸の品質向上に努め、1900年のパリ万博で金牌を受賞。地域を西日本最大の生糸生産地にまで成長させた。また、工女として採用した養蚕農家の子女への教育で「表から見れば工場、裏から見れば学校」と称され、養蚕家が正統な利益を確保できる科学的な鑑定方法に基づく買取制度「正量取引」を創案・開始。地域振興を目指す同社の理念は現代も息づき、グンゼ博物苑・あやべ特産館・綾部バラ園からなる「あやべグンゼスクエア」の開設や、産学公の交流型次世代ものづくり支援拠点「北部産業創造センター」の開設支援など、地域振興に大きく貢献するとともに、繊維を軸にプラスチックフィルムや医療、電子部品に至るまで幅広い事業展開を行っている。
【審査講評】
"人間尊重と優良品の生産を基礎として、会社をめぐるすべての関係者との共存共栄をはかる"――波多野鶴吉氏が掲げたこの「創業の精神」は今も新鮮である。その揺るがぬ精神があってこそ、倫理性と創意に溢れる取り組みが革新を生み続け、事業が自ずと多様に展開し、世界企業へと成長されたのであろう。「あやべグンゼスクエア」の開設や「北部産業創造センター」の開設支援に見られるとおり、現代においても創業の地・綾部への想いと貢献の大きさは計り知れない。京都らしいモノづくり、さらにコトづくりを牽引する企業として、また、地域社会の歴史と文化を創造し続ける事業者として、さらなる飛躍を期待したい。
応募状況
募集期間:平成30年3月20日~5月18日
授賞式
日時 | 平成30年9月3日(月) 午後2時~午後4時(午後1時30分開場) |
場所 | ロームシアター京都「サウスホール」 京都市左京区岡崎最勝寺町13 |
記念講演
「歴史から読み解く京都のリノベーション」 |
副賞
京都創造者大賞 トロフィー、活動助成金100万円
京都創造者賞 トロフィー、活動助成金50万円
「創造の息吹」 | |
---|---|
創造の息吹は、伝統の上に芽生える。
京都の地に根付いた伝統の上に、新しく生み出される創造の心を継承・発展してゆく情景を、大地に根付いた手を伝統に見立て、生み出されるものを子供に象徴化した。 江里 敏明(えり・としあき) 1947年京都市生まれ。 日展を主な発表の場とし、現在 日展評議員・日本彫刻会運営委員なども務める。 主な作品に田辺朔郎像、北垣国道像、毛利輝元像、中岡慎太郎像、 京都国体メダルなどがある。 |
|
※賞状には京都の無形文化財にも指定されている黒谷和紙を使用 |